2014年4月15日火曜日

溶けない名前 インタビュー



2013年、約22年ぶりに発売されたMy Bloody Valentineの新譜の記憶も新しい中
近年日本でも「死んだ僕の彼女」「きのこ帝国」に代表されるような若い世代のバンドから
新たなシューゲイザーの盛り上がりを感じられるようになってきた。
そんなシューゲイザーブームとも言える昨今
自らを"歌謡シューゲイザーバンド"と銘打ったバンドが名古屋を拠点に活動している。
彼らの名前は「溶けない名前」。
歌謡曲とギターノイズの狭間を行き来しつつ、独自の"歌謡シューゲイザー"を探る彼らに話を聞いた。



メンバーみんなで「シューゲイザーって何だろう?」って勉強しだしたんですよ。


ではバンド結成のいきさつから聞かせていただけるでしょうか?

イトウ : 2012年の3月に結成しました。僕とドラムのニワさんが以前バンドを組んでいて
それから2年くらい何もバンドをやっていなかったんですけど、飲み友達で。
それで「久しぶりにセッションでもやってみようか」ってそれでやってみたら 結構楽しくて。それで他の友達も誘ってセッション会でも設けてみようかって流れになって。
毎週やってたんですよ。その流れでたまたま以前のベースを担当してくれていたソカベくんと
現在キーボードを担当している、うらんさんもこのセッション会のメンバーだったんです。
予定が合うのが、この3,4人って事が多かったので
このメンバーで何回かセッションに行ってたんですけど
僕が以前のバンドをやっていたころに曲を作っていた事があったので
「じゃあ ちょっとつくってくるよ」って、自作の曲を持って行ったのがきっかけですね。

Youtubeに投稿されたデモ音源は2012年の9月、結成して数ヶ月と
割と早い時期に公開されていますよね。結成してすぐに音源作りに入ろうという流れだったのでしょうか?

イトウ : 音源は、結成して2週間程度で1発録りの簡素な形のデモ音源を録音して
無料でライブハウスで配っていたんですよ。
それで1stを秋くらいから年明けにかけてレコーディングを始めて。

溶けない名前 「ソーダ室へ行こうよ」




バンド結成からスパンを開けずに音源作りへと動いたって形なんですね。
その頃から現在の音に近い雰囲気だったのですか?

イトウ : そうですね。「歌謡曲っぽいね」って曲が言われてて。
なんで音はシューゲイザーになったんだろう…?

"歌謡シューゲイザー"という印象的なコピーを用いてますよね。
なので元々シューゲイザーという表現を持ち込む事を決めたままバンドを始めたのかと思っていたのですが。
その様子だと、そうでは無さそうですね。

イトウ : 元々逆で。 曲が歌謡曲っぽかったんですけど、最初のセッションの時点で。
偶然、グワーっと歪ませたような音が出来て。僕がそんなギター鳴らしていたら
メンバーが「曲は歌謡曲っぽいのに、音がシューゲイザーだね。」って言い出して。
それで「歌謡シューゲイザー」って面白いからこれでやろうよって。

最初から"歌謡シューゲイザー"をコンセプトとしてやっていたわけではなくて
偶然に生まれた音ありきなんですね。

イトウ : そう。で、その後にメンバーみんなで
「シューゲイザーって何だろう?」って勉強しだしたんですよ。
元々my bloody valentine*だとかRide*だとか有名な所は知っていたんですけど
「日本のシューゲイザーバンドってどんなだろう?」ってみんなでYoutubeで検索して。
それでさらに広げていきました。

面白いですね。シューゲイザーみたいな音のバンドをやる方って
最初からシューゲイザーが大好きでっていうパターンが多いと思うので。
偶然から生まれた音からシューゲイザーを探っていくパターンはめずらしいんじゃないでしょうか?

うらん : わたしは今でもmy bloody valentineだとか、そういったものを聞いた事がなくて…(笑)
だから「死んだ僕の彼女」*さんだけ知ってて、他を全く知らないんです。

イトウ : あまり知ってもらわないままで居てもらおうって思ってて。




*My Bloody Valentine。 1984年、アイルランド ダブリンで結成。
膨大な数のエフェクターを駆使して極端に歪んだギターに浮遊感のあるボーカルが特徴。
そのサウンドはシューゲイザーと呼ばれ、様々なフォロワーを生んだ。

*Ride。 1988年、イギリス オックスフォードで結成。
轟音ギターに清涼感のあるコーラスで初期のシューゲイザー・ムーブメントを代表するバンドの1つ。

* 僕の死んだ彼女。2005年、日本 埼玉で結成されたノイズ・ポップ シューゲイザーバンド。




薬師丸ひろ子とか、小泉今日子とか斉藤由貴とか。


作詞と作曲を手かげてるのはイトウさんだとの事ですが
元々歌謡曲のルーツみたいなものってあったんですか?

イトウ : 僕ホントに中学生くらい… かな? 
音楽を聞き始めた頃から、80年代のアイドル歌謡がとても好きで。
薬師丸ひろ子とか、小泉今日子とか斉藤由貴とか。

シューゲイザーをやってる方から
まさかそのラインナップが聞けるとは思いませんでした(笑)
ウランさんの方は、音楽のルーツみたいなものってありますか?

うらん : わたし、ずっとピアノとか吹奏楽をやっていたので
バンド音楽っていうものをほとんど知らなくて…(笑)
シンセサイザーの音色に触れたのもバンドを始めてからみたいな感じで。

溶けない名前 「ぼくらの倒錯ごっこ」




現在はシンセの音作りやフレーズはウランさんがつくられてますか?それともイトウさんが?

うらん : イトウさんの作る楽曲は音色を思い起こしやすくて、雰囲気で作っているんですけど。

イトウ(Gt.Vo) : なんか僕の歌詞を読んで勝手に物語を想像してるみたいで。

うらん : そうそう。イトウさんの歌詞を読んで勝手に想像して、そのお話の主人公の気持ちを考えて。
絶望的な音色を作ろうとか迷ってる時のフレーズを作ろうみたいな。

ここでも雰囲気で決めるっていうキーワードが出てきますね。

イトウ : セッションから始まったバンドだからでしょうね。
なので僕も弾き語りのコードと歌詞だけのデモしか持って行かないし。

歌謡曲の楽曲ってアレンジとか割と決めながらかっちり作って行く印象があるんですけど
バンドのセッションからアレンジが始まるのって面白いですね。

うらん : 実はわたし、最初まさか自分がボーカルになるとは思っていなくて(笑)

イトウ : そうそうそう。最初は僕が持って行った曲なので僕が歌っていたんですけど
さっき話したシューゲイザーを勉強しはじめた頃に
「シューゲイザーってどうやったらシューゲイザーを彷彿とさせる音になるんだろう?」って考えたら
男女のボーカルってシューゲイザーを特徴付ける重要な要素かもしれないって気がついて。
それでやってみようかって。

うらん : だから最初は歌うつもりもなくて、歌うってことになってびっくりしました(笑)



ライブ中も彼女が何をやるかわたし達も解らないんですよ。


現在はボーカルも溶けない名前の大きな特徴ですよね。
もう一つ溶けない名前を特徴付けるもので重要なのがアートワークだと考えています。
そちらのお話を聞かせて頂けますか。

イトウ : アートワークですが「おやすみAちゃん」*にお願いしています。
元々、彼女と僕は友達だったんですけど
僕がバンドを始めようかなって時期に彼女がたまたまセーラー服の自分の写真を撮った画像を
インターネット上にアップロードしてたんですよ。それでこれジャケットにできないかな?って思って。
それで彼女に
「バンドを始めようとしてるんだけど、この写真ジャケットに使わせてくれないかな」って言ってみたら
協力してくれるとのことだったので。それからは、いろいろバンドで使用する写真を送ってくれたり
彼女もメンバーというクレジットに入れる事を了承してくれたりって感じで。

「ぼくらの倒錯ごっこ」では
おやすみAちゃんのインスタグラムでの投稿動画を使用して独特な雰囲気を作り出していますね。
Youtubeでライブ映像を拝見させて頂いたのですが
おやすみAちゃん自身がステージ上でバンドと競演されていました。
ノイジーなギターサウンドの中に、セーラー服の彼女が佇んでいる光景は印象深かったです。

溶けない名前 「@DAYTRIP」




イトウ : 気分でステージにあがってくれるんですよ。ああしてくれ、こうしてくれとは僕は一切言ってなくて。

うらん : ライブ中も彼女が何をやるかわたし達も解らないんですよ。

じゃあ完全に打ち合わせとかは一切なしで?

うらん : そうなんですよ。だから「あっ!シャボン玉吹いてる!」って私たちも驚いたりして(笑)

やっぱり決めない面白さみたいなものを感じますね。
活動に関してはこれからこんな風にやりたいとかってあるんですか?
それともやはりそれもまだ決めないって感じなんでしょうか。

イトウ : ホントにマイペースにやれたらいいなって感じですかね。
音源は、いつかは全国流通にできたらいいな、いろんな人に聴いてもらえたらいいなってのはありますね。
それ以外は大好きな音楽をやっていけたらっていうくらいで。

音源ですが、ディスクユニオンの2014年03月の月刊ランキング
自主制作のミニアルバム「おしえてV感覚」が3位。「おやすみA感覚」が7位にランクインしていましたね。

イトウ : はい。そうみたいです。本当に買って頂いてありがたいですね。

最後に、これからの活動への展望があれば教えてください。

イトウ : やっぱり音源でいろいろな方に知って頂けたのは大きかったので
音源に力を入れたいっていう気持ちはあります。
だから次の音源をクオリティ高いものにしたいっていうのと
あと曲作り。今バンドの持ち曲が20曲弱あるんですが
それをさらに増やして、楽曲のクオリティという意味でも高いものをさらに作りたい。そしてそれをライブで演奏したいっていうのが 展望でしょうか。なんかめっちゃ普通な事言ってる。

本当に健全なバンドの姿という印象を受けます。本日はありがとうございました。



*おやすみAちゃん @oyasumi_milk(on instagram)。




    溶けない名前「おやすみA感覚 e.p」
     1. 刺したい(再録)
     2. ロボットと詩集
     3. ヰタ・マキニカリス
     4. ソーダ室へ行こうよ(再録)

    Disc Union








    溶けない名前「おしえてV感覚」
     1. 幽霊少女は八月を殺す
     2. 「さよなら」が呼んでる
     3. こわいせいめいたい
     4. ぼくらの倒錯ごっこ

    Disc Union







ライブスケジュール

2014.04.29@名古屋spazio rita
溶けない名前presents「おやすみA感覚vol.2」
[band] 溶けない名前、basquiat、the piqnic(浜松)、and more…
[DJ] sad_hyena
[live paint] コルカロリ
adv2,000/door2,500



























    溶けない名前
     2012年結成。歌謡シューゲイザーバンド。
     無気力なサイケデリア、浮遊感、幻想感、ポップなメロディと共存する幻惑的な世界。思春期。
     2013年3月、自主企画「おやすみA感覚vol.1」にて、死んだ僕の彼女
     少女スキップらとの共演を果たす。
    溶けない名前(http://tokenainamae.tumblr.com/)